「赤いちゃんちゃんこ」は贈らないで

本卦還り(ほんけがえり)を迎える数え61歳を、隠居の区切りとした習慣は、いつできたものかしらないが、今も60歳定年制度に引き継がれている。2000年前のローマも、60歳を老年の始まりとしていた。

成人した人が亡くなるのが60歳程度だった江戸時代と違って、いまは人生80年。60歳は壮年といっていい。

若いときにはなかった時間も、若い時よりはお金も、今はある。人生を楽しむのはこれからだ。

赤いちゃんちゃんこ、に一歩手前のいま、ブログを始めることにした。なぜなら、第3の人生をこのように送ることもできる、ということをみんなに提案し、同好の志を募って世間にある年齢に関する偏見を取り除きたい、と思うからだ。


その偏見はもちろん、自分にもあった。

今、私はパリに住んでいて、パリ市が始めたレンタルサイクル、ヴェリブでどこにでもでかけている。ある日、新聞で「ヴェリブ初の死亡事故」という記事を読んだ。60代の女性が車と接触して亡くなった、というのである。最初に頭をよぎったのが、なんと、「60のお婆さんでも、がんばって自転車に乗ってたんだわ」だった。次の瞬間、私の顔はこわばっていた。