「眠れぬ夜」を少しだけ楽しむ



昨夜は、パリ市が2002年に開始した、年に一度のアート・イベント、ニュイ・ブランシュだった。これは「白夜」ではなく、「眠れない夜」という意味で、町中いろんなところでほぼ夜通しでさまざまなイベンドが行われる。
今年はパリの5地区を中心に、プログラムが組まれた。サンジェルマン教会ではパティ・スミスのコンサート。これは入場者数に限りがあり、チケットがとれなかったので、私たちはイベントが一番集中するマレ地区に繰り出した。
ボルタンスキーなど有名アーティストのインスタレーションが見られる館は長蛇の列。通りすがりに入れる館や教会に入ってみて、おもしろければ見続け、おもしろくなければすぐ立ち去る、というのが私たちの鑑賞法だ。アーティストの名前を見てもほとんど知らない人ばかりだから、仕方がない。一晩のうちにひとつは「めっけもん」があるものだ。

「めっけもん」は、オテル・ド・レッツの映像プロジェクション、「死海」だった。イスラエルのアーティスト、Sigalit Landau シガリット・ランダウ、今まで名前を知らなかったが、これは覚えておくべきだ。ビル・ヴィオラの映像を初めて見たときの感覚がよみがえった。

たくさんのスイカのアップがゆっくり続く。割れて赤い果肉をむき出しにしたスイカもある。またわけのわからないビデオかな、と思いながら見ていると、スイカが数珠つなぎになっているのに気づく。裸の女性がスイカの間に浮かんでおり、カメラが遠のくと、スイカの渦巻きの周りにさざ波がたっているのが見える。
ネットで映像を見つけたので、百聞は一見にしかず。映像を見てほしい。
http://video.fc2.com/content.php?kobj_up_id=2008051454zQBLe0

これで十分満足すると、眠くなった。
家に戻る途中ずっと、天空まで垂直にのびる強烈な光が見えていた。パフォーマンス集団ダムタイプの音楽などを手がけるミュージシャン、池田亮司の照明インスタレーションだ。光が出ているモンパルナス・タワーまで行けば、音楽も聴けるらしいが、家に帰って寝た。

年取るっていやだな、一晩町を歩けばもっとたくさんの「めっけもん」が見られただろうに。