フランスの空を飛ぶコルボー(カラス)

フランスの警察や裁判所、税務署は毎年、他人の違法行為を告発する匿名の手紙をたくさん受け取る。こうした手紙の差出人はコルボー(カラス)と呼ばれ、違法行為の摘発に大きな役割を果たしているらしい。

この事件の発端となったコルボーは、外交、防衛産業界の重要大物、エアバスの親会社でもあるEADS社の副社長ジェルゴランだった(2006年5月にコルボーだったことを告白)。コルボーからの資料(後に偽造文書であることが発覚)で汚職、違法行為を示唆されたのは現サルコジ大統領(当時の内相)。偽造文書と知りながら、自分を追い落とすために偽情報を政治的に利用した、とサルコジから民事訴訟を起こされたのは、ドビルパン元首相というから、超大物ぞろいの大事件だ。ドビルパン元首相は、サルコジの当時の政敵、シラク大統領の後継者と見なされていた。疑惑の発覚当時、シラク大統領(当時)がどの程度かかわっていたか、に国民の関心が集まっていたが、この点は結局、今でもあいまいなまま。事件に関連して、日本の隠し口座の存在まで明るみに出たシラク氏だが、今のところ、事件の追求は彼にまで及ばない様子である。