免責特権が切れて、逮捕や訴追が続々

太平洋の島タヒチは、フランスの海外領土だ。その楽園の島で12年前、あるジャーナリストが海で失踪した。いつもJPKの署名入りで、仏領ポリネシアの大統領ともいえる地位にあるガストン・フロス(78歳)を告発してきたジャーナリストだ。フロスの圧力で新聞社から解雇されたが、粘り強くフロスの汚職の証拠書類を集めていた。

フロスは1995年、GIPという私設警備隊を形成したが、赤シャツを着た700人のメンバーのほとんどが元囚人だった。JPKの失踪から数年後、このメンバーの一人が、GIPとはフロスの反対派を監視、恫喝する組織で、命令によっては「清掃もする」という爆弾発言をした。
JPKが失踪した日、彼は命令によってJPKを尾行していたが、途中で尾行停止命令を受けた。しかし、JPKの周りで腑に落ちないことが起きていたので、そのまま尾行を続けたら、JPKを乗せた車が波止場のGIP専用パーキングに停止するのが見えた。その前を別の車で塞がれたため、何も見えなくなった。翌日、JPKが失踪したとのニュースを見て、GIPメンバー2人(名指しで)に、JPKを知ってるか、と聞くと、「コンクリ片を4個つけて海に清掃したよ」と言われた、という。
「JPKを清掃した」とされる2人については、何の捜査もなかったが、爆弾発言の男性は誣告罪で起訴され、数ヶ月、刑務所に入れられた。

そのガストン・フロス(78歳)上院議員がやっと、上院議員免責特権が解除されて6日目、待ってました、とばかりに逮捕された。収賄、架空雇用など「汚職のことなら何でも」のガストン・フロスは、シラク元大統領とも親しかった。汚職事件だけでなく、JPK殺人についても訴追されてほしいものだ。

シラク元大統領自身も、過去のパリ市長時代の汚職を訴追されている。12年間の免責が切れたためだ。「フランスのイメージが低下する」と反対する人も多いが、免責期間が長ければ忘れてもいい、ではすまないだろう。