アレバ社の放射能汚染裁判

アレバ社のトップ、ロヴェルジョン女史の退任は、アレバ社による汚染水事故裁判の前日に発表された。
「経済性と安全性の向上を計った」欧州加圧水型炉EPRを開発したものの、期待したアブダビ契約は成約せず、第1号のフィンランド、オルキルオトー原発では工事が大幅に遅れて、30億€の延滞金支払いを余儀なくされ、第2号のフランス、フラマヴィル原発でも20億€の工事予算超過、大幅遅延に見舞われ、ロヴェルジョン女史の新型原子炉の夢は崩れつつあった。
ほぼ政府機関といってよい会社だから、これを機に、政府が首のすげ替えを行ったものだろう。サルコジとはあまりしっくり行っておらず、サルコジもかねてから更迭したい、と思っていた人物であるらしい。

アレバ社は、福島の汚染水処理受注で知られるようになったが、汚染水や放射性廃棄物を処理するだけでなく、原発開発から運営まですべてを行う原子力公社だ。
この会社の汚染水事故が今日、南仏ニームの裁判所で審理されている。
2008年の7月、南仏トリカスタン原発で、30立方メートル(福島の膨大な汚染水に比べたら、一滴にすぎないが)の放射性排水が付近の運河や河川を汚染したが、同社はASN(仏原子力安全局)への報告義務を怠り、近隣住民にもこれを知らせなかった。広島の原爆93個に相当する75kgのウランが水中に放出され、飲料水や遊泳地を汚染した。昨年10月、軽罪裁判所(放射能汚染が軽罪とは!!)で、このような重大な事故をASNに報告しなかった、として、同社は4万ユーロの罰金を言い渡された。しかし、水汚染に対しては無罪放免となったため、脱原発団体、グリーンピース、CRIIRADなどが控訴していた。
ただ今審理のまっただ中だ。結果がでたらまた追記する。

しかしこれは、アレバ社による初めての事故ではない。ラアーグ再処理工場では1980年、政府が報道管制を敷いた巨大事故未遂が起きている。原因は、停電による冷却機能喪失だったが、さまざまな幸運が重なって、大事故には至らなかった。フランス全土が居住不可能とならなかったのは、ちょっとした偶然のおかげなのである。ノルマンディのラアーグが再処理工場に選ばれたのは、人工密度が低いこと、海峡の海流が非常に早く放射能を拡散しやすいためだった。要するに、あちこちの国(オランダ、ドイツ、日本など)から放射性廃棄物を集めて処理しているものの、完全処理は不可能で、放射性物質を海に流しているのである。死の灰の完全処理能力を持たず(それができる技術はこの地球上にはない)、処理後に出た廃棄物は全部シベリアに運んで終わり、というような会社に福島汚染水の処理を任せていいものか。

青森県六ヶ所村の再生処理場もこの会社に頼んだが、経費がずるずるかかるばかりで(当初予算1兆円弱からすでに2兆強になっている)、いまだに稼働できないでいる。福島もどれだけ膨大な請求書が来るか、案じられる。要するに、他国の原子力産業を食い物にして生きている会社なのだ。

日本にも汚染水処理技術があるのに、なぜフランスの会社に依頼したのか、理解できない。最初からうまくいかない、という不安があって、失敗したら外国の会社に責任を負わせればいい、という考えからだろうか。