マルクール事故、やっぱりあった放射能漏れ

昨日、CRIIRADによる「放射能漏れはない」という発表を書いたあと、地元の脱原発グループCAN84の「14:00-17:40の間に、通常の3-6倍に線量が急上昇した地点がある」という報告を読んだので、CRIIRADに問い合わせた。今日、CRIIRADサイトを見ると、「多くの人からCAN84の報告に関して質問が寄せられた」として、CAN84のデータとともに、新たに見解を発表していた。
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/marcoule/11-09-16-can84.pdf

「12日(事故直後)午後の発表と同じく、事故の際に、大量の放射能放出はなかった、ということは断言できる。ただし、放射性物質の放出が皆無であったかどうか、については未だ結論づけることはできない。公式発表では未だに、施設内および爆発時に溶融炉に入っていた金属に含まれる核種が特定されておらず、煙突内の残滓物の調査結果も工場内および近辺の大気への影響も発表されていない」としている。

CAN84が11カ所で使用したのは、Quartex RD8901。CRIIRADが「放射能検知は非常に難しいので、こうしたデータ(シロウトによる検知、ってことか)を放射能汚染という重大な問題の結論づけに使用するのは注意を要することだ。だからCRIIRADでは、地元の協力を得て、専門的な監視ポイント網を構築している」という。それでも、市販のカウンターで市民が測った数値が上昇した、という事実は、否定できない。「放射能漏れがあった」と思うしかないだろう。以下、CAN84の表(すべて9月12日)で数値が大きい部分を掲載する。全11カ所を見たい場合は、上のサイト、PDFファイルの3ページ。

カルペントラ
14:20 平均0.37μSv/毎時(通常は0.13)
23:45 平均0.12

アヴィニョン、ポント・コマーシャルセンター
14:50 平均0.98μSv/毎時(最大1.13)(通常は0.14)
23:10 平均0.12

アヴィニョン、イタリアン駐車場
15:05 平均0.85μSv/毎時(最大0.94)(通常は0.14)
22:55 平均0.14

アヴィニョン、ダラディエ橋
15:15 平均0.68μSv/毎時(最大0.74)(通常は0.16)
22:35 平均0.17

あとは、高速道路のニーム出口やモンペリエ東出口で、だいたい0.50μSv/毎時台(夜遅くなると、0.10台に減少)だった。
短時間とはいえ、やはり検知されるほどの放射漏れがあり、それが風によって雲散するようだ。雲散といっても、あちこちに広がるだけで、消失するわけではない。2、3時間後の数値がこれだから、事故発生直後はもっと高線量だったと思われる。しかもそれを調べることができるのは、当事者しかいない。その当事者も政府も、「放射能漏れはなし。単なる産業事故だ」と言う。私も騙されていた。ほんと、これは原子力事故の常、原子力のウソである。

アヴィニョンは、歌にもなった橋や14世紀の法王庁で知られ、夏は劇場フェスティバルで世界中から人が集まる観光都市だが、こんな危険な場所にあるなんて初めて知った。
もうひとつ驚いたのは、このあたりの通常値が、0.10から0.16μSv/毎時であること。福島事故が起きて以来の日本の多くの都市より高いではないか。チェルノブイリ事故のとき、フランスではアルプス地方やアルザス、南仏に多くの放射能が降り注いだが、その痕跡なのか、あるいは、「原発銀座」ローヌ川沿いにあるため、いつもこの程度の放射能汚染があるためなのか。1986年以前のデータがあれば知りたいものだ。