あざとさ目立つモガリ

それに比べて、同じころ封切りになった日本映画「モガリの森」(よくまあ、漢字変換にもでない難しい漢字を探してきたものだ)は、あまりにもお粗末だった。カンヌで何かの賞をとったというのは、お金でも動いたせいではないか、と勘ぐってしまう。

映画の冒頭は、たいへん美しい日本の自然。山の木々をそよがす風、緑の水田の向こうに、民俗博物館展示品級の葬列がゆっくりと動く。きれいだなあ、と思う反面、 この段階で、 ひょっとしたらこれは、外国の映画賞狙いの映画なのでは、という不安が頭をよぎる。

案の定だった。

茶畑の映像はたいへんきれいだ。しかし、そこで、高齢者施設の入居男性(愛妻を亡くし、痴ほう状態になっている)と、その男性に怪我をさせられ、腕に包帯を巻いた女性職員(こちらも息子の死という重い過去を負う)が、無邪気に延々とかくれんぼに興じるのには、白けてしまった。

茶畑はとてもきれいです、でも、もうこの辺で十分・・・。 

さらにありえないことが続く。二人だけで車で遠足にでかけ、エンコした車を放置して山にのぼり、雨でずぶ濡れになり、たき火をして一夜をすごし、翌日、ヘリコプターの音を空に聞きながら、さらに山にのぼり、男がとうとう特別の地を見つけ、穴を掘り日記を埋め、愛妻の死の喪があける・・・。
テーマはよくても、こう絵空事が続くのでは、テーマの深さが見えて来ない。残念なことである。