パリのホームレス


このところ、零下前後の気温が続いている。身にしみる寒さだ。
寒波がきたときだけ、ニュースになるのがホームレス問題だ(それまでは忘れ去られている)。路上生活は凍死を意味するから、警察も必死でホームレスを緊急シェルターに連れて行く。入りたがらない自由人もいて、説得もなかなか大変らしい。
ちなみに、ホームレスはSDFと呼ばれる。固定住所を持たない人、の意味だ。呼び方を変えたからといって、尊厳が回復するわけではないのだが・・・。

去年の秋、長い旅行から戻ったら、やけにSDFが増えていた。私の実感だけでなく、増えていたのは事実らしく、冬を目前にして、彼らの利害を代弁する組織「ドンキショット(ドン・キホーテの仏語読み)の子供たち」が創設された。冬のある日、この組織はSDFにテントを支給し、サンマルタン運河沿いをテントで占拠して話題になった。創立者のひとり、オーグスタン・ルグランは、俳優で弁がたち、テレビにもよく登場する(私は最初、この人もSDFだと思っていた)。もちろん、ピエール神父財団などSDFを支援する団体はいくつかあるが、実力行使をするのはこれが初めてだ。

この組織が先週土曜日(サルコジ大統領のデートの日だ!)、ノートルダム寺院あたりのセ−ヌ河畔に200の赤いテントを張って示威行動をした。観光客が多い地域だ。橋は鈴なりの人で埋まった。2時間ほどで警官に排除されたが、この3日後、政府は「ドンキショット」はじめSDFを支援する各団体を呼んで、来年1月15日に今後の取組みに関する合意書に調印することを約束した。

昨年末、政府は今年末までに7000人分の緊急シェルター、12000人分の仮住居を設置すると約束したが、シェルターは1000人分、仮住居も半分の6000人分しか実現していない。今回の示威行動はこの空約束に対する抗議だった。合意書にはおそらく、シェルターや仮住居の収容人数と達成期日が盛り込まれるもようだ。

さすが、はじめに実力行使ありき、のお国柄だと感心した。