フランスには20万人のSDFがいると言われる。

不法滞在外国人(当然、社会保障の範疇外だから)か、精神の病いを抱えて働けない人がSDFになるのか、と思っていたが、30%が働いているという。働いてもアパートを借りる資金がたまらず、あるいは未納家賃をため込んでホームレスになるらしい。日本で最近よく聞く、ワーキング・プアと呼ばれる人たちだ。

「ドンキショット」のサイトのインタビューを見ると、大多数がフランス語をしゃべるフランス人で、何らかの苦境に陥った果てに、助けてくれる親族、友人もなく路上生活者になったという。もちろん、自己管理ができずアル中になり、家賃分も飲んでしまったため、という人もいるだろう。しかし、自己責任、といってしまうのは気の毒なひとたちのほうが多いのではないだろうか。

ちょっとした悪い偶然が重なっておおきな悲劇に至ることは誰にでも起こりうる。そうした運の悪い人たちであるならば、豊かな国の政府が最低限の住まいを保証するのは当然のことだろう。

緊急シェルターでインタビューされた黒人男性が、「SDFって一緒くたにしないでほしい。ボクは日中仕事しているんだ。物乞いと4人部屋で暮らすのはまっぴらだ」と意気軒昂にしゃべっているのを聞いて笑ってしまった。その意気があればまだまだ大丈夫。その意気もなくしてしまったら、SDFから一生抜けられない。
(写真は、http://www.lesenfantsdedonquichotte.com/ より)