初めてのリヨン

 
上左:ジャン・ヌーヴェルが改装したリヨン・オペラ座。上右:建物の住人は18世紀?この壁一面がだまし絵なのだ。



リヨンへ行って、日本に関係する現代オペラを2つ見た。

11世紀の更級日記を題材にした、「レディ・サラシナ」(ペーター・エトヴォシュ作曲)と、三島由紀夫「近代能楽集」中の1編、「班女」(細川俊夫作曲)。

プログラムの「レディ・サラシナ」のページには、歌麿の浮世絵が! 時代がちゃうやんか。でも、楊貴妃の絵を使われるよりまだましかーーなどとイチャモンを付けていると、舞台装飾に、なつかしい名前をみつけた。1960年代にハイ・レッド・センターを作った前衛アーティスト 、中西夏之だ。すでに70歳は越えられていると思うが、最近は舞台も手がけられているのか、と感無量。いろんな思いを削げ落とした、ミニマリズムの舞台が美しい。

 
シンプルな舞台に、太田雅公の衣装が映える。私は知らなかったが、舞台衣装家として日本で大活躍されている方のようだ。何枚も重ね着した衣装を、場に応じて脱ぐたびに、新しい色と文様が現れるが、それらはすべて背中に残っており、後ろから見るとまるで十二単のようにも見える。この作品の全衣装を、どこかで展示してほしいものだ。

作品としては「班女」が最高だった。
現代音楽はあまり耳になじまないのだが、それはメロディとして捉えるからではないか、と今回思った。細川俊夫のこの作品は、かすかな鈴の音、空中に長く残る弦の音など、メロディというより、音の響きそのもの。耳で聴くのでなく、全身をその響きに集中させて聴く。
演出は、ダンス振付のデ・ケースマーカー、衣装はティム・ファン・ステーンベルヘンと、ベルギーのフラマン勢。舞台・照明は、同言語のオランダから、ヤン・ヨリス・ラメルス。舞台に広がる丸い布が、契りを交わした男と交換した扇を象徴するのは想像できたが、それが恋狂いの女の衣装になっていく様には意表をつかれた。

美食の町だというのに、昼は遺跡・美術館で夜はオペラ。そのあとすぐ、雪山に直行したので、おいしいものを食べ損なってちょっと残念。
しかし、山にもおいしいものがあった。それは明日続けよう。