日仏パン事情

日本から戻ってすぐ、写真展を開いたり、ポルトガルに行ったり、いろいろ忙しくて、ブログのことを忘れていたわけではないのだが、書いてみようと思ったとき、「日記を書く」やり方がわからなくなってしまっていた。で、しばらく放っておいたが、今日再びやってみたら、できた。
もう読んでくれる人もいないだろうが、また日記がわりに再開する。

日本は、パン・ブームだった。
パリのモンジュ通りにある「モンジュのパン屋」の職人さんが、赤坂で開店した。興味があったので、赤坂方面に行ったとき、足を伸ばしてみた。すごい行列で、先頭の人に聞いてみたら、1時間並んだ、という。入り口では、警備員が「クロワッサンは一人2個まで」と叫んでいた。冗談じゃない、と思い、もちろん並ばないで帰った。
(ブティックのような赤坂のパン屋)



(パリの本家、ふつうの町のパン屋さん)
パリの「モンジュのパン屋」のエスカルゴ(レーズンの渦巻きパン)は絶品だが、あれも赤坂にあるのかな。クロワッサンは、おいしくなくはないが、この程度なら他にもおいしい無名のパン屋さんはたくさんある。ここはビオのパンしか作っておらず、ビオの田舎パンが人気だ。今はスーパーでも買える老舗、ポワラーヌの田舎パンよりはおいしい。

パン屋とは、近所にある店のうち、一番おいしいと思う店をひいきにするものだ。一番近いパン屋より5分先のパン屋がおいしければ、その程度は足を伸ばす。しかし、18区の果てにあるパリ1のバゲットの店、オ・ドゥック・ド・ラ・シャペルまで、わざわざ買いにいこうとは思わない。でも、大統領やその賓客と同じバゲットを食べたい、という人はパリにも大勢いるらしく、このパン屋は行列が絶えないという。近くまで行ったら足を伸ばそうとは思うが、近くにいく用事などないような、パリの北の果てにある。

一昨年、開店前のお試し販売ですっかりファンになった東京・三宿の「シニフィアンシニフィエ」。店名はフランス言語学の用語だが、れっきとした日本人の店だ。ここのパンは確かにおいしい。バゲットだけでなく、ドイツ風のパンも美味。菓子パンをごたごた作っていないのも気に入った。でも、数種類買うと、クレジットカードで買える額になる。パリではあり得ない。同じ通りを国道246号を越えて北上すると、またまたフランス語の名前のパン屋さんがある。雑誌などに出ているらしいが、クロワッサンを食べてがっかりした。パン皮の薄いあんパンだけはおいしいので、私は「あんパン屋」と呼んでいる。名前に負けないクロワッサンを作ってもらいたいものだ。

日本では、パンは毎日食べる主食ではなく、お菓子あるいは特別の食べ物、といった感覚なのだろうか。それなら、電車に乗っておいしい店に行き、並んで買うのも理解できなくはないが、食事のたびにバゲットが必要な国では考えられないことだ。
東京のパン屋さん・・名前はフランス風、店構えはブティック、というのが今風らしい。フランスと違って、いくら高くても買う人がいるのも、東京ならではだ。日本は豊かだなあ、と感心する反面、近所にそこそこの味のパン屋があるパリのほうが、ほんとうは豊かなのではないか、と思ったりもする。