普遍的管轄権に期待!

(2月17日に書いたが、アップするのを忘れていた)
きのう、スペインの弁護士ゴンザロ・ボイェ氏の会見がパリの人権保護団体のオフィスで開かれた。

スペインの司法裁判所は1月末、2002年にガザで起きたイスラエル戦争犯罪について、裁判を行うことを決定したのである。告発したのは、イスラエル軍による1トン爆弾で家族7人を殺されたマター家の人々。告発されたのは、事件当時のイスラエル国防大臣や軍事顧問など7人だ。マター家は、ガザの人口密集地帯で、運悪くも、イスラエル軍が狙ったハマス司令官の家の隣りに住んでいた。この攻撃で、15人(ほとんどが子供)が死亡、150人が負傷、足や手をなくした人もいるという。

ボイェ弁護士によると、スペインは、さまざまな国際法規定を国内法に取り入れ、普遍的管轄権を認めている国だ。普遍的管轄権というのは、重大な人道犯罪などにおいて、管轄外の外国人の刑事責任をも追及できる、と決めたもので、スペインがチリの元大統領ピノチェトを告発したのも、この法的枠組みのなかだった。
告発者も非告発者も、犯罪発生場所もスペインと関係がないが、普遍的管轄権を国で認めれば、こういう裁判が開けるのだ。なんだか少し明るい気持ちになった。

逮捕に至るのは難しいが、少なくとも、告発された人たちがスペインに入国しようとすれば、逮捕される。被告がどこか他国に行くようなら、その国に逮捕、身柄請求が行われる(逮捕するかどうかは、その国の法律によって決定されるので、逮捕されない可能性もあるが)。普遍的管轄権を認めている国は、スペインのほか、ベルギー、ニュージーランドなどいくつかあり、イスラエルには、欧州を自由に動くことが出来ない人々が80人以上いるという。

こうした裁判は時間がかかる。まず、当該国でこの件に関しては裁判にかけない、という決定を待たねばならないからだ。2002年の件については、イスラエルが「通常の軍事行動の範囲内であった」と決定するまでに、数年かかった。

スペインの裁判所は、スペイン、イスラエル双方が締約している国際法を使って裁判を開始する意向だ。たとえば、両国とも、犯罪情報の相互提供を義務づける法律を認めているので、この枠組みのなかで、イスラエルに情報提供を求めている。ボイェ弁護士は、「どこまで続くかわからないが、今のところ、イスラエルは求めた情報を送ってきている」。

(ここからは今日付け加えた)
国際刑事裁判所ICCの検察局は先週、スーダンのバシル大統領を、ダルフール地方での残虐行為のかどで逮捕状を発行した。スーダンICC条約の締約国ではないが、国連安全保障理事会が決定すれば、ICCが管轄権を持つことができる。
方や、ICC非締約国のイスラエルが、国と認められていないパレスチナで何をしようが、ICCでは裁くことが出来ない。アメリカが力を持つ国連安全保障理事会が、対スーダンのような決定を行うはずがないからである。イスラエルは何をやっても許される、という現状を打開するのに、私はこのスペインの裁判に期待したい。