チベットの日

10日火曜日は、チベット大蜂起・中国軍による弾圧・ダライラマの出国からちょうど50年目。今年、中国政府は早いうちからチベットに軍隊を派遣し、戒厳令下のような警備を敷いて、暴動勃発の牽制に成功したようだ。しかし、中国内のチベット地区を取材しようとしたフランスのジャーナリストが3人、入域を拒否されるなど、厳しい報道規制が敷かれていたから、実際のところ、どんな様子だったのかはわからない。予備拘束などは当然あったにちがいない。

四川省のアバ・チベット地区では昨年の暴動で70人が死亡、300人が今も行方不明、8000人の僧侶が逮捕された、とゲオ誌(2009年2月号)のチベット特集記事は書いている。逮捕された僧侶は今、生きているのだろうか・・・。ジャーナリストに取材されると困ることだらけの国が、これからアメリカはじめ世界の国から(国債を買ってね、などと)頼られる経済大国になっていく。不安なことだ。

パリでは、悪天候にもかかわらず、多くの人がチベット支援集会に集まった。人数はわからないが、チベット旗の数は目立って多かった。

この日、欧州では1800の自治体がチベット旗を掲げたという。フランスでは、昨年の北京オリンピック閉会まで、508自治体がチベット旗を掲げ、313自治体が、今もそれを掲げ続けている。フランス国会では189議員が、上院では67上院議員チベット支持を表明している。
フランスの地方都市10カ所でも、3月末まで、チベットを支援する集会などが開かれる予定だ。
フランスでがんばったところで、仕方がない、とは私は思わない。本国では、掲げるだけで逮捕される、その旗を掲げ、支援を表明することが、どれだけ内外のチベットの人々に「自分たちは忘れ去られていない」というささやかな希望を与えていることか。

その夜、チベット旗を掲げるパリ11区の区役所で、チベット関係の記録映画会が開かれた。映画自体はたいしたものではなかったが、 区長や国会議員が政府、自治体レベルでの今後の支援について語り、在パリ・チベット亡命政府事務所長が、この50年の苦難、チベットの言語や文化の抑圧について語った。「亡命政府もダライラマも、独立を求めてはいない。中国の中での、自治、自由を認めてほしいのだ」。

中国、チベット間で何度話し合いを持っても、議論は平行線をたどっている。中国にとっては結局、自治や自由も、独立同様に、分離主義なのだ。話し合い路線には限界を感じる。かといって、他にいい知恵もないのだが。