パリ、不況は目に見えず

先月末に書いたのに、またまたアップを忘れていた。

3月末、完全失業者が2月から比べて79900人増えて238万人になった、という相変わらずの暗いニュース。仕事が減った人は340万人。特に若者の間で失業が増えている。
従業員の3分の1にあたる110人の削減計画を発表した化学製品会社3Mでは、3月20日から無期限ストに突入。福利計画をめぐる交渉が成立しないので、団交相手の社長が何日間も、部屋に閉じ込められていた。トイレにだけは出してもらっていたようだが。
毎日いろんなことがあるので、その後どうなったか、のニュースは聞かなかった。

方や、フランスにもAIG役員のようなけしからん輩がいた。大赤字を出し、社員1600人を削減し、政府から1900万ユーロの援助を手にした自動車部品産業ヴァレオ社の経営責任者が、お手盛り退職金320万ユーロ(4億3000万円!)を手にして、ゆうゆうの引退生活に入るという。政府援助金1900万ユーロはすなわち税金。その6分の1がこの経営者のポケットに入るのだ!
あちこちで、受け取るべきではない、という声が出ている。しかし、退職金は年収の2倍という規定があるので、正当な額だと経営者は主張。ということは、年収が2億1500万円だった!? 経営者の年収って、こんなに多いの! とまた驚いた。 

パリの町中に住んでいると、こうした不況の気配がまったく見えてこない。カフェもレストランもそれなりにいっぱいで、土曜などブティック街は人であふれている(ただし、店員によると、見るだけで買わない、というが)。パリには工場がないし、工場労働者はあまり住んでいないし、国内外のツーリストが多いからだろう。

パリの、特に北の郊外に行くと、状況は違う。移民子弟が多く住み、暴動が起きたあたりだ。ぶらぶらしている若者が以前より増えている、という。治安が悪くなったという話は聞かないが、不況が長引くといずれそうなることだろう。