身びいき大統領

サルコジ仏大統領の息子ジャンが、パリ西のラ・デファンス地区を監督するデファンス地区開発公社(EPAD)のトップに就任するかもしれない、というので、仏世論が沸いている。ラ・デファンス地区というのは、新凱旋門を中心として高層ビルが立ち並ぶフランス経済の心臓部だ。300万平方メートルに15万人の勤め人を抱え、昨年、8億5400万ユーロがこの地区に投資された。

EPADトップは選挙制だが、このままでは、大統領と首相が推薦するジャンが選出される確立が高い。

ジャンは弱冠23歳、ソルボンヌの法学部2年生。しかし2008年には父親の地盤から地方議会議員に出馬して当選。大統領の息子でなかったら・・などとは考えず、ご本人は実力で当選したと信じている。
縁故採用がハバをきかすフランスだが、まだ学生で経験もない若者が、フランス経済中枢部の管理者になる可能性に、多くのフランス人がノンと言い始めた。ネット上でも反対署名が数万人分、テレビアンケートでも85%が就任に反対、野党の社会党はもちろん、サルコジが属する政党UMP内部からも反対あるいは困惑の声があがっている。
「自分は、サルコジというだけで、何をしても批判される」
と言うジャンは、サルコジというだけで選出される特典については語らない。

このたび政府は、世論を鎮めるため、12月4日の選挙に、公務員(といっても、大臣クラスだが)が投票できないようにしてはどうか、と提案した。この選挙は、公務員9人、地方議会議員、商工会議所の9人が投票する。わずか9人だから、ジャンに投票しなかった公務員はすぐにばれてしまうからだ。
さて、この結末はどうなるのだろうか。フランスがまだ民主国家なのかどうか、が試される。

サルコジ仏大統領は就任後、高校生に向けてスピーチしたとき、
「これからは、どんな家に生まれたか、ではなく、どれだけ一生懸命勉強し、働き、自分の考えで行動したか、によって道が決まる」
と唱い上げたのだが・・・このままじゃ、大統領世襲制とでも言いだしかねないなあ。

余談だが、ジャンは、フランス最大の家電販売チェーンDartyを創設したユダヤ・ファミリーの令嬢と結婚し、2人でイスラエルに行ってユダヤ文化を学んだりしている。もうじき生まれる子供はもちろんユダヤ人だ。