ベルリーニの「夢遊病の女」

2日後は、ベルリーニの「夢遊病の女」。こちらは、取り替えてもらわなくても大丈夫な、いい席だった。またクッションを2つ持って出かける。フランスの人気ソプラノ、ナタリー・ドゥセーが夢遊病のアミーナ役、というので、ウェルテル以上に切符がとれない出し物だった。チェチリア・バルトリのアミーナが素晴らしすぎるので、ナタリー・ドゥセーはどうか、と思っていたが、これで彼女を見直すことになった。夢遊病で歩きながら、婚約者に潔白を誓って歌うときのはかない声・・・すばらしいの一語に尽きる。
しかし、嫌疑が晴れてさあ結婚、となる最後のシーンでは、真っ赤なドレスに光り輝くネックレスをつけたアミーナが、プリマドンナのソロ公演のように幕の前に華々しく登場。それから幕の間に見えるテーブルの上に飛び乗って歌うシーンには、何となく違和感を覚えた。婚約者への一途な思いを歌っていた乙女アミーナが、まるで椿姫かカルメンのよう。役柄を選ぶこのプリマドンナの意向を汲んだ演出なのだろうか。ここは白い花嫁ドレスで、元気に、しかし清楚にやってほしかった。