マリアカラスの墓

所用でペールラシェーズ墓地の近くに行ったので、去年、心臓発作で急死した友人のお墓参りをした。お墓といっても、ロッカー型の骨壷安置所だ。同じく心臓発作で亡くなった彼女のご主人、次に亡くなった彼女のお母さん、彼女と、3人の骨壷が安置されている。花を捧げる場所がないので、隣に置いてあった花瓶をちょっと拝借して、黄色いミモザの花を置いた。「ほら、リビアのキュレネ遺跡で見たミモザだよ」。
ペールラシェーズ墓地には、ショパンバルザックドラクロアなど、歴史に残る人たちのお墓がたくさんあって、入口で地図をもらい、偉人の墓を探す見学者が多い。私も一度、ここへ’観光’に来たことがあるが、まさか友人がここに眠ることになろうとは・・・。

ついでに、骨壷安置所にいるはずのマリア・カラスを探した。前回の’観光’ではみつからなかったのだ。たいていの偉人は立派な墓に眠っているが、ダダの画家マックス・エルンストや舞踊のイサドラ・ダンカンのように骨壷安置所でひっそりと眠る人もいる。マリアカラスはロッカー番号16258、4棟ある骨壷安置所の東棟の地下だった。ロッカーの石彫り扉は、彼女の死後十数年後に「マリアカラス友の会」が作ったらしい。それまで、お骨壷はどこにあったのだろうか。あるいは、これは象徴的な墓にすぎず、中には何も入っていないのだろうか。

マリアカラスの斜め下にも上にも空き家があった。10年で346ユーロ、30年で1045ユーロ、50年で1628ユーロだという。今から買っても、長生きしたら期限がすぐ来てしまうし、基本的に死んでも墓はいらない、と考えているのだが、マリアカラスの隣人になるなんてちょっとかっこいいのでは、と浅はかにも思ってしまった。