「おとなしい国民性が政府に悪用されている」

前に何度か書いたCRIIRADの創立者の一人、欧州エコロジー緑の党のミシェル・リヴァシ欧州議会議員は20日、福島からの帰国記者会見を開いた。
「現地は怖いほどひどい状況だ、私はほんとうに憤慨している。悪夢は始まったばかりだ」
「人々は、放射能汚染などないものとして暮らしていて、私は防護服にマスク、手袋なのに、現地の人々はまったく無防備だった」「フクシマ後じゃない、フクシマはまだ何も解決していない。フクシマまっただ中、と言うべきだ」と語気を強めた。
東京のデモにも参加したが、「人口3500万の首都圏で、集まったのは2万から3万人。政府は、感情を表現したり、反抗したりしない日本人の性質をうまく利用している。政治権力は、東電と結びついた少数の人の手にある」と怒りを隠さない。

フランスでは、日本で反政府暴動が起きないのを不思議に思っている人も多い。 海江田経産相が停止中の原発を再稼働させたい(もう想定外という言葉は使えないぞ)と言っても、何も起きないのだから、これでは「お行儀がいい国民」を通り越して、「何やっても文句言わない、黙って死んでいくアホな国民」、となってしまうのではないか。

フェッセンアイム原発に人間の鎖

フランス原子力安全局ASNは6月末か7月頭に、アルザスのフェッセンアイム原発に対して、さらに10年間の運転継続を許可する準備をしているもようだ。フィガロ紙は23日、すでに延長は決まっている、と報じた。
フェッセンアイム原発は、運転34年。現在稼働中の原発では、フランスで最も古い。格納容器底部のコンクリが、福島第一でも8mあるのに、わずか1mしかないチャチな原発だ。その上、真下にライン川の自由地下水があって、大事故が起きれば、オランダのロッテルダムまでライン川が汚染される恐れがある。ストラスブール市議会でも4月に、運転継続反対の決議を出している。

これで思い出すのは、福島原発の運転延長許可である。
2011年2月7日、原子力・安全保安院は東電に対して、稼働40年の老朽福島第一原発一号機をさらに10年運転してよい、という許可を与えた。それから1月ちょっとで大事故に至り、未だ収束のメドはたっていない。

老朽化が福島事故の原因ではないとはいえ、フランスではフクシマ後、いやフクシマ真っ最中の今、フェッセンアイムの即時閉鎖運動が盛り上がってきており、昨日26日、約5000〜1万人が5kmの人間の鎖を作って同原発を取り囲んだ。ドイツ国境に近いため、脱原発の道を歩み始めたドイツからもスイスからも援軍が来た。「今日はフクシマ、明日はフェッセンアイム」というプラカードも見られた。

フェッセンアイム原発延長反対は、福島後に始まったわけではない。この1月、賛成派、反対派による激しい議論がテレビで放映された。私が映像を見たのはつい最近だが、賛成派は相変わらず、石炭で二酸化炭素をだすのはいかん、電気代があがる、の一点張り。自動車だって30年動かせば、廃車になる、といえば、延長賛成派は、原子炉以外のすべての部分が修理、取り替え可能だ、と反論。

30年経った自動車の部品がダメになれば、動かなくなるだけだ。自動車の持ち主に影響があるだけだ(他を巻き込む事故が起きない限りは)。しかし、原発はそうではない。住人や環境にどれほど壊滅的な被害を与えるかが、想定できないのが原発だ。中学生でもわかる簡単なことを無視するから、賛成派の議論はいつも幼稚でブが悪い。

反対運動の拡大で、運転継続が見直されることを心から願っている。

アレバ社の技術アドバイザーの夢物語

福島原発の汚染水処理システムが5時間でだめになった。だめになったのはアメリカ、クリオン社製のほうらしいが、アレバによると、この水のタイプに合わないフィルターだった。ブリタという飲料水フィルターだって、その国の水質に合わせたフィルターを作っているというのに、お粗末すぎる。それと、フィルターに集まった汚泥の放射線量が高すぎて、人間が近づけない、よってフィルター交換ができない、というのである。もちろんロボットは用意していなかった。汚染水の放射線量の読みの甘さ・・・東電はアレバにもウソ数値を出していたのだろうか。

そんななか、アレバの技術アドバイザー、ベルトラン・バレのインタビュー映像を見つけた。福島事故3ヶ月目の直前に録画されたものだ。原発擁護派の論客として、テレビ討論で「石炭に戻っていいのか」などと言うのを見たことがある。ほとんどが訳する価値のないコメントなので、今後の展望についての部分だけ、訳してみた。彼は東電と同じように、循環冷却がまだできると信じていて、日本で一番楽観的な人も言わないようなことを言っている。
「循環冷却システムは8月半ばまでにできあがる。汚染水の浄化は年内いっぱいで終わる。4つの原子炉には亀裂が入っていないから(!?)、10年から15年かけて発電所全体を浄化したら、再稼働できるだろう(!?)。汚染地の浄化はもっと時間がかかるだろう」
http://www.universcience.tv/media/3295/fukushima-3-mois-apres--2.html

あんた、ちょっとまともなの? 技術アドバイザーが現実を見ていないのだから、汚染水処理システムだって非現実的な見積りで着手したに違いない。
ほんと、大丈夫なのか、こんな会社に頼んじゃって。

原発擁護のベッソン経産大臣、TVで醜態

テレビM6で 6月19日、エリック・ベッソン産業エネルギー大臣(日本の経済産業省にあたる)が原発に関するインタビューの途中で、マイクを外して立ち去るという出来事があった。
インタビュアーのギ・ラガッシュは、 「原発がないと電気代があがる」という大臣の言葉を遮って、「それは電気料金だけのことで、廃棄物処理とか諸費用は入ってない」と切り込んで、なかなかのもの。さらに、原発の安全性を唱う大臣に、「では、元下請け労働者が原発の不具合を暴露しているこれを見て下さい」と、ビデオを見せ始めた。「亀裂があって」(元原発労働者)とビデオが始まると、大臣は「あー、失礼します、気分悪い」と立ち去ってしまった。「どうして立ち去るのですか」と聞くインタビュアー、足早に立ち去る大臣。
ああ、日本にもこんなインタビュアーが出て来ないかなあ。相づちを打ったり、ヘエーと驚くだけの人をズラリと並べた日本のインタビュー番組とどうしても比べてしまうわ。
http://www.dailymotion.com/video/xjcvpm_eric-besson-quitte-le-plateau-de-capital_news

アフリカも汚染、アレバ社

ニーム控訴裁判所におけるアレバ社放射能汚染裁判(17日)の結果はまだ報道されていない。有罪になれば大ニュースだから、 おそらく一審と同様、無罪放免だった可能性が高い。ラアーグで当たり前のこととして行われている放射性物質海洋投棄はじめ、まあ、あちこちで放射能汚染をしまくっている会社だ。ふと思ったが、英仏海峡のニシンは大丈夫なのだろうか。

チェルノブイリのあと、日本は大丈夫だ、あれはロシアだからだ、と思っていたのと同じように、フランスでは、地震のないフランスは大丈夫だ、と思っている人が多い。そういう人と話す時のために、こちらも色々調べておかなければいけない。で、アレバ社について調べてみたら、最近の事象だけでも出て来るわ出て来るわ。

2009年、アレバ社がウラン採取しているニジェール(アフリカ)のアコカン市で、放射線量が異常に高いホットスポット(通常の500倍)がグリーンピースによって発見され、2010年、同社は浄化作業を行った。以後もずっとグリーンピースは厳しいモニターを続けている。
http://uranium-news.com/2010/01/06/areva-admits-to-radiation-pollution-of-niger-city/

2010年9月のニュースによると、アフリカ、ガボン南東部ムーナーナにあるアレバのウラン鉱山が40年に渡って放射能汚染排水を湖や川に垂れ流し、住民に肺ガンを多発させた。注意を喚起する立て札を立てていたが、住民はそれを無視して湖や川でイモや衣類を洗っていた。上水道のない彼らには、汚染水を使うしか他に方法がなかったのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=iw-igDQh8kY&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=NT3Z_eFsjUk

お膝元フランスのリムーザン地方でも50年に渡るウラン採鉱によって河川を汚染させた。ただしこれも、ニームの裁判同様、汚染自体が法に問われることはなかった。
http://www.limousin.lesverts.fr/article.php3?id_article=199

こんなことは即刻中止しなければならない、という思いが強くなるばかりだ。

アレバ社の放射能汚染裁判

アレバ社のトップ、ロヴェルジョン女史の退任は、アレバ社による汚染水事故裁判の前日に発表された。
「経済性と安全性の向上を計った」欧州加圧水型炉EPRを開発したものの、期待したアブダビ契約は成約せず、第1号のフィンランド、オルキルオトー原発では工事が大幅に遅れて、30億€の延滞金支払いを余儀なくされ、第2号のフランス、フラマヴィル原発でも20億€の工事予算超過、大幅遅延に見舞われ、ロヴェルジョン女史の新型原子炉の夢は崩れつつあった。
ほぼ政府機関といってよい会社だから、これを機に、政府が首のすげ替えを行ったものだろう。サルコジとはあまりしっくり行っておらず、サルコジもかねてから更迭したい、と思っていた人物であるらしい。

アレバ社は、福島の汚染水処理受注で知られるようになったが、汚染水や放射性廃棄物を処理するだけでなく、原発開発から運営まですべてを行う原子力公社だ。
この会社の汚染水事故が今日、南仏ニームの裁判所で審理されている。
2008年の7月、南仏トリカスタン原発で、30立方メートル(福島の膨大な汚染水に比べたら、一滴にすぎないが)の放射性排水が付近の運河や河川を汚染したが、同社はASN(仏原子力安全局)への報告義務を怠り、近隣住民にもこれを知らせなかった。広島の原爆93個に相当する75kgのウランが水中に放出され、飲料水や遊泳地を汚染した。昨年10月、軽罪裁判所(放射能汚染が軽罪とは!!)で、このような重大な事故をASNに報告しなかった、として、同社は4万ユーロの罰金を言い渡された。しかし、水汚染に対しては無罪放免となったため、脱原発団体、グリーンピース、CRIIRADなどが控訴していた。
ただ今審理のまっただ中だ。結果がでたらまた追記する。

しかしこれは、アレバ社による初めての事故ではない。ラアーグ再処理工場では1980年、政府が報道管制を敷いた巨大事故未遂が起きている。原因は、停電による冷却機能喪失だったが、さまざまな幸運が重なって、大事故には至らなかった。フランス全土が居住不可能とならなかったのは、ちょっとした偶然のおかげなのである。ノルマンディのラアーグが再処理工場に選ばれたのは、人工密度が低いこと、海峡の海流が非常に早く放射能を拡散しやすいためだった。要するに、あちこちの国(オランダ、ドイツ、日本など)から放射性廃棄物を集めて処理しているものの、完全処理は不可能で、放射性物質を海に流しているのである。死の灰の完全処理能力を持たず(それができる技術はこの地球上にはない)、処理後に出た廃棄物は全部シベリアに運んで終わり、というような会社に福島汚染水の処理を任せていいものか。

青森県六ヶ所村の再生処理場もこの会社に頼んだが、経費がずるずるかかるばかりで(当初予算1兆円弱からすでに2兆強になっている)、いまだに稼働できないでいる。福島もどれだけ膨大な請求書が来るか、案じられる。要するに、他国の原子力産業を食い物にして生きている会社なのだ。

日本にも汚染水処理技術があるのに、なぜフランスの会社に依頼したのか、理解できない。最初からうまくいかない、という不安があって、失敗したら外国の会社に責任を負わせればいい、という考えからだろうか。

11日、パリでも脱原発デモ

6月11日、日本での脱原発アクションに呼応して、フランスでも全国55カ所でデモ、集会などさまざまな催しがあった。パリのデモは参加者数千人。原発の牙城フランスでも、脱原発へと意識が変わりつつあるように思われる。これだけの大惨事、地球規模での汚染を目の前にして、まだ原発をやりたい、って人の気持ちがわからない。フランス原発地図に長い間見入っている男の子の姿が印象的だった(写真)。