ヘレン・カルディコットとアーニー・ガンダーセン

しばらく旅行していた。 日本で万一のことが起きたら、という不安があったから、携帯電話のつながるところに出かけていた。ヨーロッパの最貧国だが、携帯はつながった。

旅行中も頭をよぎるのはフクシマのことだった。東京や横浜から来た旅行者とでくわしたので尋ねてみたが、「べつにー、みんな普通に暮らしてますよ。心配したってしょうがないし」。

家に帰って、フクシマのことを心から案じる2人の専門家の対話をネットでみつけた。2人の言葉の端はしに、東大の児玉教授にも共通する、「人の心」がにじみ出ていた。 オーストラリアの医師で反核運動家のヘレン・カルディコットさんとおなじみ、アーニー・ガンダーセン氏(エネルギーに関する独立諮問機関、フェアウィンズ主催)だ。最後にカルディコットさんは、「アーニーと奥さんのマギーは、家をなくしたにもかかわらず、無償で、こうした分析をして皆さんに知らせる活動を行っている。フェアウインズのサイトを応援して」と締めくくった。原発の危険を知らせる活動のために、原子力産業からホサレて家をなくすことになったのだろうか、と心配になった。

ちょこっと聞いてメモしたところだけ書いてみる。長いから全部書く時間がない。
カルディコット「フクシマの現状を説明して下さい」
ガンダーセン「福島第一原発はまだ放射性物質を1日何ギガベクレルも放出し続けている。ひとつだけよいニュースは、汚染水循環システムが機能していること。もう汚染水を生み出さないですむ。そのかわり、高放射性物質を含むフィルターがたくさん出るので、その処理が問題となる」
「この1月間、3号機の燃料プールの写真が一切出ていないのが不可解だ。爆発後プルトニウムが発見されていて、3号機燃料プールで臨界が起きたのは確かなのに、2週間前のNRC(米原子力規制委員会)発表では、燃料プールは問題ない、と言っている。4号機は使用済み燃料プールの下につっかえ棒を作っただけで、建物の強化はされていない。大きな地震がきたら、すぐ逃げよ、と日本の友だちにいってある」
「1号機を覆ってガスを閉じ込めるテントも完成しそうだ。ただし放射性ガスは出続けるし、それはさらに高所に排出される。テントの意義は、付近で働く作業員を保護するだけのものだ」
カルディコット「チェルノブイリ事故後、政府はただちに多くの人を強制避難させたが、日本政府は活発な動きをせず、国民を被曝するに任せている。今後ガンを発症するひとがどんどんでる。政府のこの無気力は一体どういうわけか?」
ガンダーセン「まったく、説明できない。政府、役所、産業のエリートは、事態の深刻さを否定、大きな問題があるのにそれを認めないのだ」
「 これから日本人にとって重要な、米の収穫時期にはいる。どれだけの汚染が発見されるか、大問題になるだろう。汚染が見つかった米をどうするか?焼却すれば、ふたたび放射性物質が大気中にでて、フクシマ事故の再現だ。北半球をも汚染しかねない」
「除染に1500億ドルと見積もったが、あと500億ドルは必要だろう。日本で中規模の畜産業者が倒産したが、これだけでも負債額50億ドル。除染にはもっともっと経費がかかる」
カルディコット「除染って、一体全体、可能なことですか?放射能はどうしたってなくならない。山も川も森もすべて汚染されている。ひまわりに土地の除染効果があると言っても、セシウムを吸ったひまわりをどうするのか」
ICRPやWHOなど原子力、保健関係の国際機関は一体何をしている?」
ガンダーセン「つい最近ジュネーブで国際原子力委員会の会議があったが、密室会議だった。あなた呼ばれた?私も呼ばれていないよ」
「 珍しいことだが、 日本人もやっと怒り始めた。レンタルビデオ店ガイガーカウンターの貸し出しを始めたり・・・」
カルディコット「でも、もう遅すぎる」
ガンダーセン「この5年で日本北部の肺がん発生率は20-30%増えるだろう。それが最初で、そのあとは・・・」
カルディコット「白血病、障害児、低IQ児など、問題がどんどんでてくる。チェルノブイリの繰り返しだ」と泣き出しそうな声で続けた。
http://www.fairewinds.com/content/arnold-gundersen-fukushima-update-aileen-mioko-smith-rising-radiation-levels-japan-and-gover